青春なんて僕にはないと思っていた

僕は高校時代、地味で目立たない生徒だった。特にいじめられることや、友達がいなくて寂しい思いをしたというわけではないのでそれを不満に思ったことはないが、とても充実していたとは言えない高校生活だった。

だから、青春なんて僕には無縁のものだと思っていた。

今日高校の友人と偶然に電車で再会し、近況を話し合ったあとその流れで夕食を食べに行くことになった。適当な店に入り適当なメニューを頼み、そのあとも僕らはさまざまなことを話し合った。だけど高校時代の話は一切しなかった。それは彼がもう高校時代の自分を隠してしまいたいと思っているからだろう。彼も僕と同じ地味な生徒だった、類は友呼ぶのだ。しかし今彼はとてもいきいきしている。それは巷でいう大学デビューとはまた違う。心の底から学生生活を楽しんでいるかのような感じだ。そこに過去の記憶は要らない。僕はいつか自分も彼の世界から消えてしまうんでは無いかと恐れた。そうして僕たちは食事を終えたあと別れた。

一人で歩く帰り道。長袖カットソー一枚でもちょうどいい、春の心地良い陽気だ。ずんずん歩いていると気持ちが良くなってきたので僕は思い切って高校の周りを一周ぐるっと散歩することにした。見慣れた校舎だけど、もうここに入ることは無い、そして同級生もいない。そう思うと退屈な高校生活を過ごしてきた僕からは考えられない”さみしい”という感情がふつふつと沸きあがってきた。僕にもあったんだこの気持ちが、そう思った。それからは少ないながらも振り絞って色々のことを思い出してみた。入学してすぐ、振り分けられたクラスが体育会系ばかりでとても居心地が悪かったこと。二年時はさらに居心地の悪いクラス(原因は俺にある)に入ってしまい、交友関係そして勉学ともにどん底に落ちてしまったこと。最後の年、自分なりに勉強を頑張って、応援してくれるクラスメイトがいたこと。移動教室で近くなった君と授業前の数分間毎回楽しくおしゃべりできたこと。その子のことが本当に本当に堪らなく好きだったこと。結局何も言えずに卒業してしまったこと。それらすべてが青春だったと思った。

僕はこれからの人生まだまだ先は長い。だけど、この三年間は恐らくいい方向の記憶としてずっと僕の中にあり続けるだろう。そして、色あせることは決してないだろう。僕の友人の彼も彼なりの形で三年間の記憶はきっとあり続けるだろう。そういうことを考えると僕はなんだか嬉しくなった。